日本自動車輸入組合(JAIA)は2014年1月15日(水)、理事長会見を実施しました。
会見要旨は以下の通りです。
上野 金太郎 理事長
昨年の日本経済は、安倍総理の「三本の矢」に代表される積極的な経済政策を背景に、下げ止まりから緩やかな回復に転じ始めた。自動車産業も、徐々に活力を取り戻し、秋に開催された第43回東京モーターショーには、前回を大きく上回る方々が来場され、再び自動車が注目を集めるようになってきたことを実感している。
しかしその一方では、今なお多くの方々が、東日本大震災とそれに伴う原子力発電所の事故の影響により避難生活を余儀なくされており、さらに昨年は、台風や豪雨が多くの災害をもたらした。被災者の皆様に改めて心よりお見舞いを申し上げ、一日も早く元の生活を取り戻せるよう切に願っている。
昨年の国内自動車市場は、登録車が前年比3.8%減、軽自動車は6.7%増、全体で0.1%増と、ほぼ横ばいの結果となったが、後半からは回復基調に戻り、少しずつ上向いてきた。
このような状況のなか、輸入車、うち海外メーカー車の販売は、前年比16.1%増の約28万500台と、当初の予想を大きく上回る成果を残すことができた。
会員各社は、日本のエコカー減税制度への対応を進め、昨年は約67%、3台に2台がエコカー減税制度の対象となるまでになった。特に、優れた環境性能とパワフルな走行性能をダウンサイジングで両立させ、「運転する楽しさ」を損なわないクルマ造りが、お客様の安定した支持を得たと考えている。さらに、欧米で開発された先進安全技術、例えば衝突回避ブレーキや歩行者エアバッグを搭載したニューモデル、また、日本の厳しい基準をクリアした新世代のディーゼルエンジン等、長いクルマ造りの歴史を持つ国々の技術や、個性溢れる魅力的なモデルを相次いで投入したことが、この結果に結び付いたと自負している。また、いわゆる超高級車とよばれる1千万円を超えるモデルも順調に推移した。
以上の結果、海外メーカー車の登録車全体に対する市場シェアは8.6%と、過去最高を記録した。しかし、軽自動車を含む市場全体に対するシェアは5.2%と、諸外国と比較して依然として低い水準に留まっている。
日本メーカー車を加えた輸入車全体では、前年比9.5%増の約34万6千台となった。
昨年は、輸入車にとってたいへん嬉しいニュースがあった。日本カー・オブ・ザ・イヤーを、当組合の会員が輸入販売する、フォルクスワーゲン・ゴルフが受賞したことである。日本カー・オブ・ザ・イヤーの長い歴史において、海外メーカーのモデルが受賞することは初めてであり、たいへん喜ばしい快挙であった。今回の受賞は、輸入車が持つ高い走行性能と先進の安全、環境性能などが、日本のお客様から高い評価を受けた結果であると考えている。
日本の自動車市場は、中長期的には、少子高齢化の影響もあり縮小傾向が続くものと予想され、当面においても、4月には消費税率の引き上げが決定しており、消費の冷え込みが懸念される。このような環境下においては、魅力あるさまざまな選択肢をお客様に提供することが重要であり、JAIAは、お客様の購入意欲を阻害する要因を取り除くための活動に注力する必要がある。
昨年末に発表された2014年度税制改正大綱では、4月の消費税率引き上げ時に自動車取得税率の引き下げが決定されたが、その引き下げ幅は当組合の要望どおりにはならず、自動車購入時の総支払額は、残念ながら増加してしまう。また、当組合が廃止を求めている自動車重量税についても、道路維持等のための財源として、継続を前提とした取扱いになった。
JAIAは、他の自動車関連団体と密接に連携を取り、今後の税制改正に向けて、軽自動車を含め、公平かつ公正な税制改正が実現するようロビー活動を継続し、ユーザー負担の軽減のために努力していく。
一方、昨年は株価の上昇に伴う個人消費の回復など、明るい材料も見られたが、本年はやはり、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその後の反動減、消費の冷え込みがどの位の期間続くかについて、慎重に見極める必要があると考える。
前回、1997年に消費税率が2%引き上げられた時に、自動車業界はたいへん苦い経験をした。税率引き上げ前の予想を上回る駆け込み需要と、引き上げ後の大幅な反動減と景気の後退により、海外メーカー車の販売は、暦年ベースで前年比7%近く減少して、需給のバランスも崩れてしまった。
今回は、取得税率の引き下げが緩和剤になると思われるが、やはり駆け込み需要と反動減は避けられないものと考える。したがって、2014年の展望は、3月までは駆け込み需要を含めて前年を上回る数値で推移し、4月からはその反動減と税率引き上げによる個人消費の冷え込みの影響を受けて、前年を下回り、当分の間はその傾向が続くと予想する。
具体的な台数に言及することは控えるが、JAIAの会員各社は、業績の悪化を最小限とすべく、魅力的なモデルを引き続き積極的に日本市場に導入し、日本のメーカーとは異なるアプローチで環境性能と経済性を追求し、優れた走行性能を兼ね備えた、いわゆる「輸入車らしさ」を求めるお客様のニーズにお応えできる商品の充実を図っていく。
そのためには、いくつかの課題の解決、例えば、自動車関連税制のさらなる適正化や規制改革のスピーディーかつ着実な実現が必要である。このような課題解決のために、JAIAは、輸入車業界を代表して、他の自動車関連機関と連携しつつ、関係省庁へのロビー活動を進めていく。
JAIAは、これまで長年にわたり、優れた技術を搭載した魅力ある輸入車を、お客様が自由に選択できる市場環境を確保するために、自動車関係諸税の負担の軽減化、簡素化を訴えてきた。
昨年12月、政府は「2014年度税制改正大綱」を閣議決定した。このなかで、本年4月の消費税率の8%への引き上げの時点で、自家用乗用登録車に対する取得税率の一律2%引き下げが盛り込まれたことは緩和剤になると考え、また、税制改正の検討の過程で浮上した、高価格車に重い税を課すとの提案に対して、当組合が、「これは付加価値の高いクルマが不利になるだけでなく、最先端技術の開発・普及を阻害するものであり、受け入れ難いものである。」と反論したこともあり、この提案が廃案となったことにより、最悪の事態は回避されたと考えている。
しかし、今回の税制改正では、当組合が求めているユーザー負担の軽減は実現されず、むしろ負担が増加してしまうため、4月以降の国内の新車需要の減退をたいへん懸念している。
さらに、本年末までに方向づけが行われる「2015年度税制改正」においては、積み残しとなった「自動車重量税の廃止」などの課題が山積しており、JAIAとしては、自動車ユーザーの負担軽減と税の簡素化を、本年も重点課題としてさらに取り組んでいく。
輸入車の歴史を、安全技術の面に焦点を当てて振り返ってみると、古くはシートベルト、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)、チャイルドシート、そしてエアバッグと、さまざまな最新の安全装備をいち早く導入してきた経緯がある。また、最近の例では、衝突回避ブレーキ、歩行者エアバッグ、あるいは先進の前車追従システムなどがあり、今日まで、輸入車による世界最新技術の導入が日本のマーケットをリードしてきていると言っても過言ではない。
環境面における技術についても、最近ではクリーンディーゼル、また、ガソリンエンジンにおけるダウンサイジングと過給機を組み合わせたパワートレーン、デュアルクラッチトランスミッションなどの、CO2削減・燃費向上技術を、輸入車がいち早く市場に投入しており、環境技術の面でも輸入車は日本市場に貢献している。
これらの世界最新技術を日本へ導入する際には、国土交通省のみならず、経済産業省、総務省などが所管する様々な法令をクリアすることが前提であることは言うまでもない。しかしながら、先進的な技術の導入に対しては、先進的であるがゆえ、従来の日本の法規や規制ではカバーできない部分もあり、そのために、日本市場への導入に時間がかかり、また場合によっては導入を断念しなければならないこともあった。
JAIAは、新技術の日本市場への導入が円滑に進むよう、これまでも関係官庁と積極的に協議を行い、会員各社の新技術導入へのサポートを行ってきたが、本年も重点項目のひとつとして取り組んでいく。
現在、関係官庁と協議を行っている新技術の例と、関係省庁との協議の現状と見通しについて説明する。
第一の例として、水素式エアバッグとエアコン用の新冷媒があげられる。水素式エアバッグは、人体および環境に優しいというすぐれた特徴を持っている。またエアコン用新冷媒には、地球温暖化係数が低く、環境面ですぐれている。これらは、双方とも欧米では既に導入が始まっているが、現在の日本の高圧ガス保安法には、日本独特の規制が残っており、制度改正が行われない限り、これらの環境に優しい技術を装備したクルマが、先進諸国の中で日本にだけ導入できないという問題があった。これに関して、JAIAは、数年にわたり経済産業省と協議を行ってきたが、昨年末、ようやく必要な制度改正を行うとの方針が同省より示され、進捗を確認することができた。本年も、経済産業省の検討を支持しつつ、この制度改正が年内の極力早期に実現するよう見守っていく。
第二の例として、車両前方の歩行者や自転車を精緻に検知するレーダーがある。この装備の導入には、総務省が管轄する電波法関連法令の改正が必要であり、そのためにJAIAはロビー活動を行っている。これは、使用する周波数帯を新たに求めるものではなく、既に使用が認められている周波数帯の枠内での電波帯を広げるだけのものであるため、この最新技術を一日でも早く導入できるよう、規制緩和の早期実現を期待している。
環境と安全に役立つ新技術の導入普及促進の観点から非常に大きな期待を寄せているのは、日本政府が推進する世界統一車両認証制度の構築である。JAIAは、この制度の実現に向けて、できる限りのサポートを行う。世界統一車両認証制度の第一ステップは2016年に開始されるが、その時点ではこの制度に含まれない基準がある。例えば、乗用車の排気・燃費基準などである。
これらの基準が国際調和されれば、日本市場への導入モデルの拡大や、最新技術の早期導入が可能となり、それは、輸入車が安全、環境面でさらに貢献できることであり、早期実現を大いに期待している。
自動車は、安全性と環境性の両面において社会的に大きな期待を受けている。しかし、日本の政策面での現状を見ると、エコカー減税や、クリーンエネルギー自動車補助金などの、優れた環境性能を持つクルマの普及をサポートする施策は相当程度講じられているが、その一方で、乗用車の安全性向上のための減税、補助金、自動車保険割引などの制度やインセンティブはいまだ導入されていない。歩行者の安全のために、例えば、被害軽減ブレーキに対する減税や補助金、保険割引制度やインセンティブが導入されれば、最新安全装備の普及が加速するものと考える。その効果として、年間の交通事故死亡者2千人削減という、政府目標の達成にも大いに貢献することになると考える。政府や関係方面には、安全装備の普及促進をサポートする施策を新たに講じていただくよう、JAIAとしても要望する。
JAIAが二輪車のインポーターを会員として迎えてから、今年で5年目に入る。
第一の重点活動は、PHP認証制度とよばれる輸入自動車特別取扱制度の導入促進活動の継続である。すでに、会員8社中3社がPHP認証を取得し、全登録台数の3割程度を占めるまでになっているが、本年は、さらに多くの会員がPHP(認証を取得できるよう支援し、その利便性向上に努めていく。
第二の重点活動は、車両法規の国際基準調和活動である。すでに、新騒音規制で国連基準(UN R41-04)が国内の車両法に導入されたが、今後はさらに、二輪灯火器の国連基準の国内採択への取り組みを行うほか、2016年に実施される第3次排ガス規制の導入に向けた車両法改正について、国土交通省と協力しつつ取り組んでいく。
加えて、もうひとつの重点活動は、中長期的に縮小傾向を辿る国内二輪車市場の活性化を図ることである。JAIAは、これまで自動車工業会様の二輪車特別委員会と協力して、市場の活性化のためのさまざまな活動を行ってきているが、今後はさらに、官民合同プロジェクトとして昨年から開始された「バイク・ラブ・フォーラム(BLF)」に積極的に参加し、BLFが目標にかかげる「2020年の国内二輪車・オートバイ需要100万台実現」に向けた活動を強化していく。
昨年11月22日から12月1日にかけて開催された「東京モーターショー2013」に、JAIAは前回に引き続き共催団体として参加した。
前回を大きく上回る来場者数を記録し、私どもの会員もその多くが参加することで、その一翼を担えたものと自負している。また、東京に引き続き開催された名古屋、大阪のモーターショーもそれぞれ成功裏に終了した。今後はさらに、福岡、札幌、仙台と各主要都市でのモーターショーが続く。いずれにおいても、来場者の皆様が輸入車の魅力を実感できる機会として成功するものと確信している。
JAIAは、これからも日本自動車工業会様、日本自動車販売協会連合会様をはじめとする他の自動車関連団体との連携を図りつつ、経済産業省、国土交通省など政府関係組織との協調を通じて、輸入車市場の発展、さらには、安全で環境に優しいクルマ社会構築に一層寄与していく。私どもは、様々な魅力ある輸入車を多くのお客様のお手元にお届けすることを通じて、日本の自動車市場と日本経済の持続的発展に貢献してまいりたいと思っている。