日本自動車輸入組合(JAIA)は2014年7月23日(水)、理事長会見を実施しました。
会見要旨は以下の通りです。
庄司 茂 理事長
私は、5月23日の第49回通常総会において、当組合の第10代の理事長に選任された。この歴史ある組織の理事長という重責を担うことを大変名誉に思う。
昨年の海外メーカー車の販売は、約28万台と17年ぶりの高水準であった。今年に入ってからもその基調は続き、3月までの第一四半期では、前年同期比で約30%増と、増税前の駆け込みもあり、極めて順調に推移した。
しかし、本年4月に消費税率の引き上げが実施され、3月までとは一変して、4月以降の実績は落ち込み、第二四半期の実績は前年同期で約16%減と、いわゆる反動減が顕著な状況となった。
以上の結果、当上半期の海外メーカー車の販売は、前年同期比8.0%増の約14万4千台、日本メーカー車を含めた輸入車全体では、1.1%減の約16万9千台であった。
4月から減少傾向は続いたが、半期の水準としては決して悲観するものではなく、海外メーカー車の実績は、上半期としては最高水準にある。
また、価格帯別で顕著なのは、1千万円以上のモデルについては、消費増税以降も堅調に推移しており、お客様の消費意欲は底堅いものがあると感じている。
この消費税率引き上げに伴う駆け込みと反動減については、言い換えればお客様が税金に対していかに敏感であるかを物語るものだと思う。その観点から、自動車を購入、維持するためにかかる過重な税負担を大幅に軽減することが焦眉の課題であることは言うまでもない。
本年下半期においては、消費税率引き上げによる反動減の影響は徐々に小さくなっていくと予想する。また、主要モデルに新型車投入を予定しているブランドもあり、前年並みの水準に戻っていくものと期待している。昨年の下半期は東京モーターショー開催年であったことも功を奏し、14万7千台を記録した。本年も昨年と同様の水準で販売が推移すれば、29万台を見込む計算となるが、今年は東京モーターショー休催年ということもあり、これを上限と捉え、今後の回復に期待したい。
しかし、これからの日本は、中長期的には、少子高齢化と急速な人口減少という問題を抱えており、これは、自動車産業にとっても大きな課題である。
一方で、お客様のニーズはますます多様化し、その要求に対応できる商品を提供することが求められてくる。自動車メーカーにとっては、安全や環境に対するニーズを満たしながら、お客さま一人ひとりの状況に合わせた価値とサービスを認識できる製品を提供することが必要となる。
その観点から、JAIAは、税制の面において特定のセグメントが優遇されることで、公正な競争が妨げられてきていることに危惧を抱いている。私どもは、軽自動車を含めた自動車全体を差別なく取り扱うべきだと考えている。これは日本政府が環境にやさしい自動車を支援することに異議を唱えるものではない。こうしたインセンティブは、特定のサイズやパワー・トレーン、あるいは排気量に偏るべきではなく、公平な基準に基づくものであることが合理的と考える。
私どもは、公平な競争環境を整えるため、政府に対し自動車ユーザーの税負担の軽減と自動車税制の簡素化を引き続き求めていく。
JAIAは、従来から他の自動車関連団体と連携して自動車に係る税の「簡素、低減化」を訴えてきており、取得税と重量税の廃止を強く要望してきた。しかし、昨年末の政府の税制改正大綱では、「消費税率10%への引き上げ時点での取得税の廃止」は明言されたものの、残念ながら重量税は継続されることとなり、課題が残ってしまった。さらに、一般財源化により課税根拠を失った重量税が、「道路の維持管理・更新等のための財源」として、再び事実上特定財源化しかねない状況となっており、重大な懸念を持っている。
したがって、JAIAは、取得税については消費税率10%時点での確実な廃止と、重量税については廃止を含めた抜本的な見直しを継続して要望していく。
「税制改正大綱」には、自動車取得時に、自動車税に対して環境性能に応じて「環境割」を課す案が記載された。これは、実質的には財源確保のための取得税の付け替えであり、断じて容認できるものではない。
また、租税特別措置として適用されるいわゆるエコカー減税制度に関しては、これまでの実績を見れば、この制度が「市場形成に影響を、場合によっては偏った影響を与え得る要因」となっていることは明らかである。私どもは、エコカー減税制度の拡充について、将来の持続可能な自動車市場の発展を見据え、次世代自動車から内燃機関車までを通じた、すべてのパワー・トレーンを考慮し、バランスの取れた環境性能向上を促す、公平で合理的な基準に基づくものとすべきことを強く求め、輸入車が不利となる制度が構築されることのないよう、今後も渉外活動を展開していく。
JAIAが当面優先的に取り組む技術・環境分野の案件について申し上げる。
主要項目として、
(1) 国際統一認証制度(IWVTA)、
(2) 自動車騒音規制、
(3) 高圧ガス保安法に基づく規制、
(4) 電波法に基づく規制の国際調和
の4点を挙げたい。
(1) 国土交通省のイニシアティブにより、自動車基準調和世界フォーラムにおいて国際的な車両認証制度(IWVTA)創設のロードマップが承認され、2016年3月までにその制度がスタートする計画について、JAIAは大きな期待を寄せている。
しかし、IWVTA制度全体の完成までには複数のステップが必要とされている中で、2016年3月時点では、最初のステップがスタートするに過ぎず、当面は数多くの各国独自基準が残ることになる。
JAIAは、日本独自の要件による例外を限りなくゼロにして、欧米で製作され、IWVTAで認可された車両については、日本における認証作業が不要となる、本来のIWVTAの早期確立・導入を希望している。
そのために、私どもはその仕組み作りに協力し、国土交通省をはじめとする関係の方々が関係各国と緊密に連携して積極的に作業を進められることを要望する。
(2) 現在、四輪自動車の走行騒音の試験方法および近接排気騒音の規制については、日本独自の基準が採用されている。
このため、国連の基準に適合し、その認可を取得している車両であっても、日本独自の基準に則した試験を行う必要があり、会員各社には大きな負担になっている。
近年、この自動車騒音において、日本の基準を出来るだけ国連の基準に合わせるための検討が進められているが、完全な整合を図るという結論には至っていない。
JAIAは、日本の基準が完全に国連の基準と整合するよう引き続き協力していくので、環境省をはじめとする関係の方々の理解と協力をお願いしている。
(3) 海外メーカーが、既に海外の認証を取得し市場に導入されている環境にやさしい新技術について、高圧ガス保安法による規制により日本にだけ事実上輸入できないという事例が近年発生している。
最近の例では、水素エアバッグ搭載のクルマやエアコン用新冷媒の充填・回収装置があったが、数年にわたる検討の末、その輸入や整備作業を可能とする制度改正が実施される目途が付きつつあり、経済産業省の理解と協力に感謝している。
しかしながら、高圧ガス保安法関係では、「燃料電池車の水素タンク」および「天然ガス車の燃料タンク」等に関する規制緩和について、まだ大きな懸案が残っている。
私どもは、これら海外の認証を既に取得しているタンクを装備した輸入車が、日本でも認可され、導入されることで環境保全に貢献できるよう、引き続き安全確認上問題が無いことなどを鋭意、関係省に説明しつつ、早期の実現を要望していく。
(4) 車間距離制御システムや衝突被害軽減ブレーキに用いられる76GHz 帯レーダについては、最近、交通事故発生を更に低減させるために、解像度を向上させて、障害物の検知を精緻に行う開発が進んでいる。この装置を日本に導入するためには、電波法への適合が最低条件であることは云うまでもない。
ところが、欧米に限らず、世界の殆どの主要国において使用可能な周波数の幅は1GHzが認められているが、日本では500MHz しか認められていない。このため、先進的な装置を日本に導入できないのが実情であり、日本市場に導入するには1GHzまで許容されるよう電波法関係法令が改正されなければならない。
私どもは、より安全に貢献する車両を提供するために、1GHzへの拡張に向けて2013年から要望をしているが、その早期実現に向けて、審議会への参加等を通じ、引き続き政府の対応を求めていく。
JAIAは2010年以来、二輪のインポーターを会員として迎え、輸入二輪車に関する事業を展開しているが、その主な活動としては、
(1)基準の国際調和活動、
(2)輸入車特別取扱制度(Preferential Handling Procedure)
PHPと呼ばれる簡便化された認証制度に関する活動、
(3)市場活性化のための活動
の3点がある。
基準の国際調和活動では、灯火器や操縦装置の基準調和が前進した事は評価するが、騒音規制は、近接排気騒音規制と言う日本独自の規制が残っており、今後、国連基準に沿った相対値化を関係省に強く要望していくこととしている。
また、現在検討されている排出ガスに関する日本の第三期規制では、欧州のEU4規制と同等の部分もある一方、日本独自規制となる見込みである。
JAIAとしては、欧州あるいは米国において排ガス規制を認可された車両が、追加試験を受けることなく、そのまま日本市場に導入出来るよう要望していく。
PHP認証に関しては、既に会員4社が認可を取得し、その他の会員も申請済み、または申請準備を進めている状況にある。今後ともこのPHP制度の活用拡大に向け、更に、仕組みの整備・簡素化のための取組みを推進する。
市場活性化のための活動としては、
① ライダーのための免許取得負担の軽減、グローバルな視点での免許区分の見直し
② 都市部の駐車場の拡充
を最優先課題としてさらに取り組んでいく。
また、官民連携で始まった、2020年度に国内二輪市場での100万台販売の実現を目指すことなどを目標とするバイク・ラブ・フォーラム(BLF、Bike Love Forum)活動にも賛同し、二輪市場の活性化のための事業環境整備を図るべく、関係団体と一層協力していく。
私どもは2011年の「第42回東京モーターショー2011」から共催団体として東京モーターショーに参加している。
JAIAの役割は、理事長がモーターショーの副会長に就任し、開会式をはじめ公式行事に参加する。また事前準備のための各種会議に、出展実績のある主要会員会社の代表と事務局が参加し、ショーの準備・運営について、輸入車としての意見を申し入れるとともに、会員各社に海外メーカーが参加の検討をするために必要な情報をタイムリーに提供している。
現在、来年開催の「第44回東京モーターショー2015」に向けての準備が始まっているが、JAIAとしては、今まで以上に積極的に関与し、東京モーターショーがより素晴らしいものとなるよう最善を尽くす所存である。
当組合の理事長として、特に2つのことに注力したいと考えている。1つ目は2015年の東京モーターショーへの取り組みである。経済危機以降、海外ブランドの参加規模は縮小傾向にあるが、主催者である日本自動車工業会(JAMA)と連携して、国際的に魅力ある東京モーターショーとすべく最善を尽くす所存である。開催会場である東京ビッグサイトは、2020年の東京オリンピックのプレスセンターとしての利用を予定されており、将来の拡張も期待される。これに向けた魅力的な会場づくりにも貢献していきたい。
2つ目として、輸入車に対する消費者の関心の変化や先進技術の導入など、新しい変化が次々と起こる中、日本市場における輸入車の活動を支援することである。昨年、フォルクスワーゲン・ゴルフが輸入車として初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことからも分かるように、かつては外車と呼ばれ、特別扱いをされてきた輸入車に対する消費者の関心に、大きな変化が表れている。また、最近では軽自動車の販売シェアが40%を超え、一方ではハイブリッド、クリーンディーゼルなどの新しいパワー・トレーンを導入した次世代自動車シェアも高まっている。
まさに、日本市場は地殻変動とも呼べる変動期に突入している。この変動期において、お客様の輸入車に対する関心が一層高まるよう、努めてまいる所存である。