理事長会見(2015年1月20日)

理事長会見 2015年1月20日

日本自動車輸入組合(JAIA)は2015年1月20日(火)、理事長会見を実施しました。
理事長の基調スピーチ内容は以下の通りです。

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庄司 茂 理事長

2014年の実績

昨年の日本経済は、4月の消費税率引き上げに伴い様々な影響が生じ、年末の衆議院選挙では「日本経済のデフレからの完全脱却」が主要テーマとなった。自動車業界にとっては、3月までの駆け込み需要と4月以降の反動減に翻弄された年であった。国内市場全体では前年比3.5%増となったが、登録車はほぼ横ばいであった一方、軽自動車の比率が初めて4割を超え、市場構成の変化が顕著となった。

輸入車市場においても、4月以降の消費の冷え込みの影響はたいへん大きいものであった。しかし、3月までの貯金と、幸いに秋以降は、各社の積極的な新型車導入の効果もあり、暦年を通じて、外国メーカー車は約29万台と、前年を約1万台、3.4%上回り、おかげさまで史上3番目の実績を残すことができた。

しかし、軽自動車を含む新車全体に占める外国メーカー車の市場シェアは、2014年も5.2%で、諸外国と比較して依然著しく低いところにとどまった。他方、登録車全体に対するシェアは8.8%と過去最高を更新した。これは、外国メーカーのコンパクトカーが軽自動車と公平な条件で競争できれば、日本の全クラスの乗用車に占める市場シェアが更に拡大する余地のあることを示唆していると考える。

2015年の展望

これからの日本は、少子高齢化と人口減少が進む傾向にあると予想されている。この傾向は、日本の自動車市場にとっても大きな影響を与え、自動車市場体は中長期的に縮小傾向が続くものと考えられる。

輸入車は、世界のさまざまな地域で生産され、それぞれの国の歴史と文化に育まれた魅力的なモデルを厳選してお客様にお届けすることで、少しずつ浸透し、成長をしてきた。日本人は、長年にわたり、自動車に限らず世界中から優れた技術や製品を厳選して取り入れてきた。私どもは、今後もこの厳選するニーズに応え、優れた安全性と革新的な環境性能を備えた「魅力ある製品」を、二輪車、四輪車共に、日本のお客様に幅広く提供してまいる所存である。

2015年を見通すと、3月までは前年実績以下が継続することは避けられないと思うが、通年では昨年をやや上回るところに達するものと見ている。昨年は消費税率引き上げによる影響に翻弄されたが、そんな中でも、高価格帯モデル、付加価値のある新型車の販売は落ち込まなかった。私は、輸入車の商品力は明らかに高まっており、また付加価値のある輸入車への需要は堅調であると感じている。

しかし一方、昨年末に発表された税制改正大綱によれば、自動車に課せられる税負担の軽減は実現せず、基本税率は軽減されないままインセンティブの制度をあまりにも複雑化させる税制の変更となっており、クルマの需要回復に水を差すのではないかとの懸念が残る。

JAIAの活動と課題

1)税制改正要望

まず、税制改正要望活動については、引き続き「簡素、軽減化」の実現を目指すことはもちろんのこと、真の公平、公正な税制の構築を要望していく。

昨年12月30日に公表された与党の2015年度税制改正大綱では、いわゆるエコカー減免税措置の適用基準が、来年度から、2020年度燃費基準を基本としたものへと変更になるが、私どもは、この変更は、主にハイブリッド車と軽自動車に有利になるもので、今後とも世界の市場で重要な役割を果たす内燃機関車を軽視するものとなると評価している。
私どもは、次世代自動車から内燃機関車までを通じ、すべてのパワー・トレーンを考慮して、バランスの取れた技術開発・環境性能向上を促すように、「クルマの寸法」などを基準にするのではなく、公平で合理的な基準に基づくものとすべきことを強く求め、輸入車だけが不利になることがないよう、真に環境・安全性能に優れたクルマがお客様に提供されるよう、訴えていく。

2)技術、環境案件への取り組み

技術・環境分野での取り組みの重点について申し上げる。

現在、自動車の安全性向上の面で発展が期待される技術に、「安全運転支援システム」と「自動走行システム」がある。そして、その究極のゴールとして考えられているのが「完全自動走行システム」である。実際にヨーロッパでは10年から15年後の実用化に向けて開発が進められている。

しかし、その実現には、自動車単独の技術開発だけでは成し得ない部分が多くある。道路交通法規上ではどこまで自動運転が許容されるのか、また運転責任の所在は車両側なのか、ドライバー側なのか、そして境界はどこにあるのか、などについて、法的な面で今後の検討が必要である。さらに、車両とインフラ間、車両同士の通信に加えて、車両の前方や周辺状況把握のために車両に搭載するセンサーには、電波を使用するケースが多く、その使用に関しては、日本独特の規制が存続してきた。

例えば、安全運転支援システムの一機能として、輸入車では76GHz帯レーダーを使用している例がある。そして、より精度の高い障害物検知を行うためには、使用する周波数のバンド幅を広く取る必要があり、1GHzのバンド幅を使用してヨーロッパではすでに市販に移されている。しかし、日本では電波法の規制により導入できなかった。
JAIAは、本件解決のために2年前から総務省と協議を行ってきた。その結果、昨年末にようやく制度改正への道筋が見えてきたところである。

このように、既に割り当てられている周波数の中で使用するバンド幅の基準を改正するだけでも、関係省や有識者の方々の理解と協力を得ること、また長期間の検討が必要である。今後の自動走行化に向けた技術の進歩に対しては、既存の法律や基準等が技術導入の際のハードルとなる面が様々なケースにおいて出てくるものと考えられるので、JAIAとしては、今後とも、グローバルな観点に立って、合理的な基準や制度の改正に取り組んでまいる所存である。

また、環境面で普及拡大が期待される次世代自動車としての、電気自動車、プラグインハイブリッド、クリーンディーゼルおよび水素燃料電池車等の認証基準は、国連の下で基準調和の為にUN規則を策定する作業が進んでいるが、未完成のパートが多くある。

一例をあげると、高圧ガス保安法に関する水素燃料電池自動車のタンク、天然ガス自動車のタンクの材質基準撤廃等の問題が残されている。JAIAの関係者は、関係官庁に対し欧米の現行基準で必要な安全性が確保されていることを長年にわたって真摯に説明する一方、我が国の環境保護に貢献し、また国産車と競争できるよう、海外で既に認証済みの燃料タンク装置について、早急に認可し日本に導入可能とするよう要望し続けている。

私どもは、全ての基準が国際調和され、生産国における国際認証を取得した車両については、日本における追加の試験や認証を不要とすることが最終ゴールであると捉えている。

先に申し上げた国際認証は、個別の装置の認証制度である。数年前から、この国際認証を個別の装置認証から車両全体に拡大した世界統一車両認証制度を創設するための作業が国連で進められており、その第一ステップが2016年から開始される予定である。これは、国土交通省のイニシアチブによるものであり、JAIAの最終ゴールに向けた大きな前進である。

JAIAは、新技術の日本市場への導入が円滑に進むよう、これまでも関係官庁と積極的に協議を行い、会員各社の新技術導入へのサポートを行ってきたが、本年も重点項目のひとつとして取り組んでいく。

3)二輪車事業

二輪車事業については、これまでPHP認証取得を中心に取り組み、おかげさまで一定の成果を上げることができた。会員8社中4社がこの制度で認証を取得し、全登録台数の5割程度を占めるまでになっいる。本年は、さらに多くの会員がこの制度を活用できるよう支援を継続し、利便性向上に努めてまいる所存である。

次に、国際基準調和活動については、近接排気騒音の相対値化やEU5との調和等について、引き続き関係省庁と協力して進めていく。

また、市場活性化促進の面では、本年も、安全確保の徹底などを図りつつ、百万台規模の日本のバイク市場回復をめざす、官民連携事業である「バイク・ラブ・フォーラム」へ積極的に参加する。

加えて、昨年は、浜松市における「バイク・ラブ・フォーラム」開催の時に、JAIA主催の合同展示会を実施し、多くの方々にご来場いただいたが、本年はJAIA二輪事業としては初めての試みとなる、「合同二輪車試乗会」を、4月に神奈川県の大磯プリンスホテルにおいて、マスコミの皆様にご参加いただけるように開催する予定である。メディアを通じ、将来のお客様に対し、サムシング・ ディファレントで魅力的な輸入二輪車の訴求をはかってまいる所存である。

50周年記念事業

JAIAは、1965年に設立され、本年設立50周年を迎える。そこで、この節目の年に、半世紀にわたり輸入車の発展を支えて下さったお客様、マスコミの皆様、また関係者の皆様に感謝の気持ちを込めて、輸入車50年の歩みを振り返り、また将来に向けてのコンセプトや新しい技術の紹介など、さまざまな場面で輸入車を積極的にアピールし、秋に開催予定の第44回東京モーターショーに向けて、輸入車の一層の浸透をはかってまいる所存である。

まず、例年2月の第一週に神奈川県の大磯で開催している、マスコミの皆様を対象とした合同試乗会の会場において、50年の歴史を彩った象徴的なモデル13台を展示し、写真パネルと併せて「日本における輸入車の歩み」をご覧いただこうと考えている。また、同時に試乗会では、最新の技術や装備を搭載したモデルの試乗を体験していただくことで、輸入車の先進性を感じ取っていいただける企画を立てている。今日ご出席の皆様の多くはこれまでこの試乗会にもご参加いただいていると思うが、今年はさらに期待していただきたい。新たな参加も大歓迎である。

次に、広く一般の方々を対象とした「輸入車フォト&エッセイコンテスト」を実施し「輸入車とあなたの思い出・生活・夢」を大募集する。同時に、JAIA 50周年のスペシャル・ウェブ・サイトを立ち上げ、応募受付に加えて、さまざまなパブリシティを展開し、輸入車の魅力がさらに、多くのお客様に浸透するよう、努めてまいる所存である。
5月29日には、「50周年記念祝賀会」を開催し、多くの皆様をお迎えして50周年を祝い、感謝する機会を設ける。フォト&エッセイコンテスト入賞者の表彰、また著名人による輸入車にまつわるトークショウも計画している。

今年はぜひ例年以上に輸入車に注目し、焦点を当てていただくよう、お願い申し上げる。

結び

最後になるが、JAIAは、他の自動車関連団体との連携や政府関係部署との協調を通じて、日本の自動車市場の活性化にさらに貢献すべく努めてまいる所存であり、一層のご支援とご協力をお願い申し上げる。