2020年7月 理事長会見

理事長会見 2020年7月17日

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  ティル シェア理事長

1.冒頭挨拶/新理事長としての抱負

現在、日本は厳しい状況に直面しております。ひとつは、今月の豪雨によって甚大な被害を被りました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますと共に、被災地の1日も早い復興をお祈り申し上げます。

そして、もう一方は、新型コロナウィルス感染拡大により、私たちは数か月前には誰も想像しなかったような困難に直面しました。それは、多くの方々は自身の健康だけでなく、ビジネスや財政面でも厳しい状況に直面しました。また同時に、私共の業界を含め、この状況を皆で克服する為に我々自動車産業界を含め、多くの方々が絶え間ない多大な努力を払っています。

JAIA理事長に就任に当たり、まず、前任の上野金太郎氏の多大なる功績に敬意を表しますとともに、JAIA 活動にご協力頂いているメディアの皆様に心より感謝申し上げます。 また、この度は、第13代目のJAIA理事長という重責を担うこととなり大変光栄に思います。

まず、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を含めた2020年上期の輸入車販売実績を振り返るとともに2020年下期の販売展望をお伝えしたのち、下期の柱である “電動化”、“安全”に関する活動についてご説明させていただき、最後に二輪の活動計画をについて述べさせていただきます。

今日、我々、自動車産業は未曾有の緊急課題に世界中で直面しております。

この厳しい状況下、我々JAIAは国や産業界とともに一刻も早い経済の回復に貢献する為にあらゆる努力を行ってまいります。またJAIAは、パラダイムシフトを進めるとともにユーザーの皆様をサポートして参ります。JAIA会員はデジタル化やテレワークへのシフトを始めとする“New Normal”という新しい価値創造を行うことで社会的な責務を果たし、ソーシャルディスタンスを保った上で、国や関係団体と緊密に連携してこの難局を乗り切ってゆく所存です。

その一方で、この歴史上でも例を見ない事態に際し、JAIAとして、国には我々のビジネスへの影響の甚大さや潜在的なリスクを最小化させる為、引き続き国内自動車市場の回復に向け、平等に、積極的な政策的支援をお願いたいところです。

2.2020 年上半期の輸入車販売実績

2019年の外国メーカー四輪車の販売実績は9月までは堅調に推移したものの、10月以降に消費税増税および台風19号被害の影響などにより減少に転じたことから、最終的には若干30万台には届きませんでしたが、299,439台と史上5番目の高水準でした。

その後、本年1月以降は、昨年後半からの減少傾向の影響が残ってはいたものの、徐々に回復の傾向が見えてきておりました。しかし、新型コロナウィルス感染症の発生と感染拡大による影響が増大し、3月下旬に政府・自治体による緊急事態宣言が発令されたことで、お客様の販売店へのご来場、および販売店での営業活動に大きな影響が出ました。

4月以降は国内の自動車販売全体が大きく落ち込む中、外国メーカー四輪車の販売台数もかつてない程の大幅減少を記録し、結果として本年1月以降6ヶ月連続で前年同月実績を下回り、上半期合計では前年同期比23.2%減の11万4,380台と、大変厳しい結果となりました。また、日本メーカー車を含めた輸入車全体でも、21.7%減の13万7,826台となりました。

3.2020 年下半期の輸入車販売展望

市場環境面では、5月25日に政府の緊急事態宣言が全面解除され、販売店へのお客様のご来場にも回復の兆しが見えつつありますが、お客様と販売店関係者の健康と安全を最優先に考え、また、感染予防対策と社会経済活動の両立を図る為、JAIAを含む自動車流通10団体合同で「自動車販売業における新型コロナウィルス感染予防対策ガイドライン」を策定致しました。

今後はこのガイドラインに沿って感染防止を徹底しつつ、販売活動を行うこととなります。お客様には営業時間短縮や入場制限、マスクの着用などのご不便をおかけすることもありますが、ご理解を賜りたくお願い申し上げます。

また、従来よりJAIA会員は、インターネットでの販売を始めとした、オンラインを活用したお客様との関係構築に積極的に取り組んで参りましたが、これからは新しい日常「New Normal」と言われる新しい生活様式の中で、コロナウィルスを克服する為の、より安全な移動手段として、パーソナルモビリティが再評価されている今、一層その取り組みを加速していくこととなります。

JAIA会員は、新型コロナウィルスが猛威を振るった本年上半期においても、日本のお客様に最新の輸入車をお届けすべく新型車、限定車等を投入して参りました。

下半期においても積極的に続けるとともに、JAIAの重要な役割であるユーザー負担を軽減する市場活性化の取組みとして、国際的に見ても過重な税負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を進めて参ります。現時点では具体的な販売台数の予測数値はありませんが、こうした取り組みにより、着実に回復して参りますので、ご期待下さい。

4.JAIAの主要活動計画

世界的な新型コロナウィルス感染症は、海外本社部門などにおける開発、生産、サプライチェーン、認証、国際物流に影響を及ぼしています。関連する基準適合対応への遅延、入国管理などによる事業活動に欠かせない人の移動への制限や、最終的には日本の販売現場への影響に至るまでビジネス上の緊急の課題に直面しています。

新型コロナウィルス感染症拡大の影響は世界中での感染拡大が収束するまでは予見が難しく、引続き今後の世界の自動車産業への影響が懸念されているところです。そのような極めて異例である昨今の状況に鑑み、政府の緊急経済対策において、自動車税環境性能割の1%軽減措置が当初予定の9月末から半年間延長され、来年3月末までとされたことについて、政府並びに関係各位に感謝申し上げます。

また、緊急の要望として、新たな排出ガス基準の適用時期に関して輸入車業界の置かれている状況を関係省庁にご説明して、ご理解をいただいたところです。JAIAは今後も新型コロナウィルス感染症拡大の影響に関連した緊急課題について、関係当局と緊密に協力、連携して日本の消費者のご期待にお応えできるよう活動を続けて参ります。

次に、電動車の普及に関する活動について述べます。
昨今、日本各地でも水害の多発し、因果関係が議論されている地球温暖化への対応が重要課題となっています。その様な中、世界各国で自動車由来のCO2排出量を削減するための規制強化が進んでいます。

元来、国の目標としても2030年度までに新車販売におけるこれらの電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、さらに燃料電池自動車の割合を20~30%とすることが掲げられているところですが、今般、2030年度燃費基準が策定され、その基準達成に向け、さらなる電動車の販売拡大が求められております。

JAIAは主要メンバー企業が中心となり、これまで個社として努力をしてきた電動車普及に関する活動をJAIAの活動に拡大し、輸入電動車の認知度を高める活動を推進致します。市場のニーズに耳を傾けた上で、ユーザーが望む優遇税制の延長、補助金制度の継続・改善や充電インフラ環境整備の強化に向け、積極的に政府や関係団体との対話を行っていくなど、これまで以上に電動車の普及に邁進して参ります。 

第三にJAIAの安全に関する活動について述べます。
昨年来、高齢者の悲惨な事故が相次ぎ、政府はその対策の一環として、対歩行者AEBSの義務化や65歳以上を対象としたサポカー補助金制度の緊急導入を行いました。

JAIAは政府の迅速な対応に敬意を表明すると同時に、輸入車にも公平な制度としていただいた事にこの場をお借りして、まずもって御礼を申し上げます。

また、更なる安全対策として、6月の改正道路交通法案の成立を受け、2022年の施行が決定している限定免許制度のあり方についても、関係当局との対話を継続し、長期的な視点で輸入車の安全に対する考えや具体的機能をご紹介させていただくなど、より有効な事故防止・軽減につながる制度となるよう積極的に協力して参ります。

昨今、開発が進んでいる自動運転の技術は現在、ドライバーの安全運転支援システムとしてレベル2まで進んでおります。自動車業界が目指す究極の目標である事故ゼロの実現に向けて努力している日本、欧州、米国など国で、着実に死亡事故数が減少してきております。JAIAは、さらなる安全性の向上に向けて自動運転に関する活動も積極的に継続して参ります。

今年度は、日本で第一段階高速道路等でのレベル3、限定地域でのレベル4がスタートします。 自動運転技術の開発は日本のみならず海外自動車メーカーにおいても着実に進んでいます。

JAIAは日本で国内外の様々な自動運転技術を広く普及させ、魅力ある市場を構築していくためには自動運転関連法規の国際調和が極めて重要と考えております。現在、自動車基準調和世界フォーラム(UN/WP29)において制定が進められている自動運転関連法規が日本で適用されるよう、欧州自動車工業会、米国自動車政策協議会などとも協力し、その動向を注視して参ります。

自動運転関係法令はその重要な例ですが、JAIAは今後も日本に魅力ある輸入車をスムーズに導入するため、これまで通り、国際基準調和に関する活動を継続し、究極の目標としての車両全体としての完全な型式認可の相互認証(IWVTA)の実現にむけた基準調和の活動に尽力して参ります。

5.輸入モーターサイクル活動

JAIA二輪の活動は、「市場活性化のための活動」と「安全・環境技術基準の国際調和促進のための活動」と云う、2つの柱で成り立っております。
第一の柱である「市場活性化のための活動」については、今年4月に、メディアを対象とした第6回JAIAモーターサイクル試乗会を開催する予定で準備を進めておりましたが、ご来場頂くマスコミ関係者様、出展社、会場関係者等の健康と安全を第一に熟慮した結果、開催を中止致しました。

会員各社の最新モデルが体感できる本試乗会は、今後も開催する方向で準備しておりますので、引き続き、皆様のご協力を賜りますよう、お願い致します。

更にJAIAは、他団体と連携して、政府・各政党のオートバイ関連のプロジェクトチーム、検討会の場で、二輪車の利用環境の改善に向け、要望活動を行って参りました。

その一つとしてモーターサイクルライダーの更なる利便性向上を図るべく、継続的に「高速道路料金区分の独立化と料金適正化」に向けた要望活動を実施した結果、「二輪車ツーリングプラン」が、2017年度より3年連続で実施されました。JAIAは引き続き、各種要望活動を実施して参ります。

第二の柱である安全・環境技術基準の国際調和に関しては、昨年11月の国連WP29の会議で、長年国連基準の導入を目指してきた二輪車灯火器取り付け基準UNR53が採択され、JAIAとして日本の法規にも取り入れられることを期待しております。

JAIAとしては、さらなる国際的な基準調和の実現を目指して、今後も一層積極的な活動をして参ります。

6.結び

JAIAは、引続き日本の政府や自動車産業関係各団体と協力して、ユーザーの期待に応えるべく、ユーザー負担を軽減し、環境、安全性能に優れた魅力的ある商品のご提供を続け、新しいビジネスのあり方や新たな日常を創出することで、この難局を乗り切っていく決意であります。