クリスチャン・ヴィードマン理事長
自動車産業においても、電動化をはじめとするCASEによる大変革期を迎え、さらには、カーボンニュートラルの潮流によって変革が一層加速しています。また、ウクライナ情勢や半導体不足等先行きの不透明感もある中で、JAIAは、このような変化に対応しながらインポーター会員各社の事業活動をサポートし、日本の自動車市場の持続的発展に貢献すべく引き続き事業に取り組んでいく所存です。
今後も自動車産業がますます発展できるように、絶え間なく多大な努力を続けてまいります。政府におかれましても引き続きのご支援を期待しております。
2021年上半期の外国メーカー四輪車の販売実績は回復の傾向が見えてきていたものの、2021年下半期は世界的な半導体不足やコロナ禍及びウクライナ危機による部品供給の停滞による自動車生産の減少が影響し、前年同月比マイナスが続き、受注が順調にも関わらず、供給には至らなかったため新規登録台数の実績に大きな影響が出ました。2022年上半期も半導体不足等の影響が続き受注はあるものの納期が遅れています。JAIAメンバー各社もお客様にご迷惑をかけないよう対応を進めているところです。
一方、アウトドア需要なども追い風にSUVモデルの販売が昨年に引き続き好調であり、外国メーカー車のSUVシェアは今年に入っても4割を超え続けています。さらに、JAIAメンバー各社は電動車のラインナップを拡充し、2022年上半期においては14ブランド62モデルが発表されています。2020年10月時点では10ブランド20モデルだったことと比較すると、短期間で3倍に拡大しており、メンバー各社それぞれが日本市場に対し積極的にモデルを投入しています。その結果、EV・PHEVの販売も長く拡大が続き、特にEVは前年同期と比較して58.8%増の5,192台となりました。一方で、たとえばドイツでは2022年上半期における乗用車新規登録台数に占める電動車の割合は24.7%と、日本の電動車の普及状況は現時点で低水準です。
また、2022年上半期の外国メーカー車販売台数は前年比14.7%減の116,408台となりました。また、日本メーカー車を含めた輸入車全体でも、前年比17.6%減の153,954台となりました。
日銀や総務省が出している各種レポートによれば、景気は持ち直しに動いているものの、消費者態度指数の動きから見た消費マインドの基調判断は8月時点で弱含みとなっています。しかし、このコロナ禍もあり公共交通機関から自家用車を選ぶ消費者も増えており、輸入自動車の需要は堅調に推移しています。
とは言え、先ほども申し上げた通り、半導体不足及びウクライナ危機の影響が2022年下半期の販売に継続して影響する可能性があります。今後、供給面での課題も解決され販売台数が着実に回復することを期待しております。
2022年の輸入車販売については、2021年に導入が始まった量販車種の新型車の受注と供給のバランスが正常化し、積極的投入が予定されている電動車やSUVをはじめとした新型車・限定車等が販売に寄与すると期待しております。特に、昨年の外国メーカー車新車販売台数の4割以上を占めたSUV・クロスオーバーの人気が継続すること、またさらなるラインナップの拡充が見込まれる電動車の一層の普及を想定しています。お客様に対する選択肢が増えたこと、また、政府の積極的な補助金の導入により、輸入EV・PHEVの販売が今後も拡大すると想定しております。
以上より、本年下半期以降、販売台数は改善していくことを期待しております。
この期待を実現する上で、懸念点を提起させて頂きます。それは、CEV補助金が10月中にも費消されてしまうという見込みと聞いております。これまで様々な機会を捉えて、政府の積極的な補助金の導入について感謝の意を表明して参りました。そうしたご努力の結果として、電動車の普及が促進されつつありますが、予想を上回るペースで予算の消化が進んでしまっていると思料致します。
仮に、10月/11月中にCEV補助金が終了してしまいますと、少なくとも今年度一定期間は補助金を享受できない期間が発生しかねません。JAIAとしては、支援策の継続・拡大そして最も重要なことである、一貫して申請を保証することを継続的にお願いして参りました。
ここで、敢えて申し上げるまでもないとは存じますが、カーボンニュートラルの推進という目的を含め、消費者の強い信頼を確保し、一貫した方法で電動化促進に効果的なCEV補助金の絶え間ない支援という観点から、政府におかれましては、補充的追加を是非ご検討賜りたくお願いします。
JAIAの5つの主要活動の紹介及び進捗状況をご説明致します。
まず主要活動の第1の柱である、JAIAの重要な役割である市場活性化に関する活動として、税制改正要望活動と環境・エネルギー分野にも関係する電動車の普及促進と認知向上の取組みをご説明致します。
まず、税制改正要望については、本年は税制改正大綱に基づき、自動車関係諸税の抜本的な見直しに向けた議論が進んでいくと考えております。JAIAは、国際的に見ても過重な自動車関係諸税の負担の更なる軽減と税制の簡素化・公平化を求める要望活動を進めて参ります。
続きまして、JAIAの電動車の取組みをご紹介する前に、まずは政府に対し、昨年2021年度補正予算に電動車の購入補助金と充電インフラ補助金を盛り込んで頂き、2022年度当初予算においても大幅増とされたことに感謝申し上げます。一方で、先ほど申し上げた通り、日本での現時点で電動車の普及は低水準です。そのため、電動車購入補助金や補助対象の継続と拡大、充電インフラ補助金の継続や要件緩和について政府関係等に要望してまいります。こちらにつきましては、後ほどご説明申し上げます。
また、JAIAではこのような状況の中、JAIAは昨年より輸入電動車普及促進のプラットフォームとして活動し今年6月には大阪でイベントも開催いたしました。こちらにつきましても、後ほどご説明申し上げます。
続きまして、主要活動の2番目の柱、「環境・エネルギー分野(カーボンニュートラル)に関する活動」についてご説明致します。
日本はもとより、世界各国でカーボンニュートラルに向けた取組みが進んでおり、地球温暖化防止対策は喫緊の課題と承知しています。JAIAとして、これまでもカーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを行ってまいりました。
まずはその一つである電動車の普及推進に関係する取り組みについてご説明致します。
自動車の電動化の波が押し寄せていることを踏まえ、JAIAは次の4点を中心とした活動を行いました。
一点目は車両購入や充電インフラに対する補助金を含む要望活動です。先述の通り、昨年2021年度補正予算に電動車の購入補助金と充電インフラ補助金を盛り込んで頂き、2022年度当初予算においても大幅増とされたことに感謝申し上げます。
一方で、電動車の普及の為には、電動車等への車両購入補助支援の継続及び1台あたり補助額の充実や予算年度・予算額不足等で補助金が途切れないようにする継続的な補助金制度に加え、誰にでも使いやすい充電インフラの充足が不可欠です。
充電インフラ補助金について、昨年度、商業施設に設置する充電器に関する15km規制等の撤廃や条件緩和をいただきましたが、これらの対応の継続とともに、集合住宅を含む基礎充電設備とそれを補うための公共充電施設の充実や6kWを超える普通充電器などへの補助金の拡充、公道への充電器の設置促進の支援など、特に急速な技術進歩を先取りするために急速充電器に焦点を当てて、要望してまいります。
今後もユーザーの電動車の積極的選択と利便性の向上のため、あらゆる機会を利用して政府や地方公共団体との対話・連携強化を進めて参ります。
二点目はPR関連活動、充電インフラ事業者等との連携です。
会員各社が電動車のラインアップを積極的に拡充し、輸入車販売店への充電器の設置を進めたことに加えてJAIAからの要望にも応えてくださった政府や地方自治体による電動車の購入や充電インフラ補助金の拡充のお蔭もあり、先述の通りEVは2021年上半期と比較して58.8%増の5,192台と、着実に販売台数を伸ばしました。
このような状況の中、JAIAは昨年より輸入電動車普及促進のプラットフォームとして活動し、先程も申し上げましたが、今年6月に輸入電動車の認知向上を目的に、JAIA会員が一丸となってJAIA史上初の乗用車だけでなく二輪車、バスも含めた電動車展示イベントを大阪で実施しました。特に、充電インフラ関係企業の皆様とのコラボレーションを行い、輸入電動車の認識をいただくだけではなく、我々が直面している課題に対するソリューションをご来場いただいた皆様と共有することを意識しました。JAIAは関係の業界の皆様と連携して充電ネットワーク拡大に向けた活動を行ってまいります。来年も同様のイベントを継続すべくJAIA内において開催場所や日数など具体的な内容を検討しているところです。
引き続き、JAIA会員各社が一丸となって魅力ある輸入電動車のラインアップを拡充するとともに、JAIAは電動車普及促進のプラットフォームとしての活動を更に推進して参ります。本年11月にも東京で輸入電動車の試乗会を実施する予定ですので、どうぞご来場ください。
また、JAIAは公共充電ネットワーク関連事業者、充電器メーカー、集合住宅に充電器を設置する事業者、デベロッパー、マンション修繕業界などとの情報交換や会員向け説明会の実施など、本格的な電動化に向けた連携強化を行いました。
三点目は充電インフラに関する技術的課題への対応です。
本年、JAIA内に電動車に係るEV技術TFを新たに設置し、充電インフラに関する国内特有の技術的課題への対応も本格的に開始しました。
電動車の車載用蓄電池の容量が拡充し、大容量化することに伴い、充電効率を向上することによって、より短時間で充電できることが可能になってきています。EV技術TFでは、電気事業法に関連する国内特有の電圧制限等に対し、会員企業のニーズを把握した上で、諸外国の動向も踏まえ、関係機関等と連携しながら課題解決に取り組むこととしております。
そして四点目が蓄電池を含めたライフサイクルでの取組みです。
自動車のライフサイクルアセスメントについては、国際的なレベルでの議論が進んでおります。また、電動化の推進にとって必要不可欠な蓄電池のリユース・リサイクルなど、諸外国の動向(欧州の電池規制案等)も念頭に、関係省庁と連携しながら、蓄電池のライフサイクルでのサステナビリティ向上に適切に対応して参ります。
電動化への対応に加え、内燃機関車の燃費改善も喫緊の課題となっております。会員各社は高効率でCO2排出量の少ない先端技術搭載車を導入する所存ですが、乗用車の2030年度燃費基準は2020年度基準に比べ、平均燃費ベースで44.3%の改善が求められるため、欧米で導入されている柔軟的措置、オフサイクルクレジットなどの制度的支援が必要だと考えております。
JAIAはこれらの取り組みを通じて、日本のカーボンニュートラル政策に貢献して参ります。
次に主要活動の第3の柱である、JAIAの安全、基準認証の国際調和に関する活動について述べます。
JAIAは昨今、ますます重要となっているコネクト技術に関連する制度に対応するため、これまでの活動スコープを広げ、安全部品・通信WGと名称変更した上で、自動車内外に実装される電気通信設備の動向、及び自動運転に期待される社会実装に向けた通信インフラの動向の把握に努めるとともに、必要に応じて制度の国際的な調和などを求めていきます。また、個別分野では最近導入された高度安全運転支援技術に係る補助金の適用拡大も求めて参ります。さらに、将来のデジタル化の進展も見据えて、Beyond 5GやITSに絡む通信分野の先進技術を遅滞なく導入するための情報収集等を行って参ります。
また、自動運転車等の先進自動車の安全確保のためには、車載システムのサイバーセキュリティ(CS) / ソフトウエア・アップデート(SU)等の法規も重要であり、国土交通省との対話を通して合理的な運用を目指し、かつ各OEMとも連携し、新たな規制であるCS/SUに適切に対処して参ります。
JAIAはこれまで、安全・環境性能を確保した輸入車を日本の消費者へ追加コスト等をかけずに提供していくため、関係当局とともに、国際的な基準の整合、さらに認証制度について国連の1958年協定に基づく相互承認制度が活用できるよう活動して参りました。
この結果、車両全体での枠組みである国際的な車両型式認証制度であるIWVTAが成立しています。2022年6月に発効したUN-R0の第4改訂版においてJAIAの念願であった排出ガス・燃費/電費に係るUN-R154についてもIWVTAの要素に追加されました。JAIAでは、引き続きIWVTAの利用価値を高めるべく、より完成度の高いIWVTA制度の実現に向けて活動して参ります。
一方、安全技術面では、2022年6月に開催されたWP29(自動車基準調和世界フォーラム)において、自動運行装置の法規であるUN-R157の第2改訂版が合意され、法規の適用範囲が自動車専用道路における渋滞時のみならず、巡行速度までのより一般化されたレベル3の自動運行装置の法規が国際的にも調和された形で、来年初頭には実現できる目途が明らかになって参りました。JAIAとしてもこのような自動運転の実用化についてはヒューマンエラーによる交通事故削減等に対して大きな期待を寄せているところです。その他、会員各社は交差点対応等の高性能なAEBSや車線維持/逸脱防止装置、高機能前照灯などの機能等を拡大し、より安全な製品の提供を進めて参ります。
このような取り組みを進めながら、JAIA会員各社としても自動運転やコネクテッド技術を搭載した車両を今後タイムリーに市場に投入し、より高い安全性及び利便性をお客様に提供することに貢献して参りたいと考えています。この点については、JAIAは必要に応じ、規制やルールに関して、我々の取組みに対するご支援を政府に要望して参ります。
次に、主要活動の第4の柱である、自動車公正取引・アフターセールス等の活動について述べます。
自動車公正取引に関しては、JAIAは自動車公正取引協議会の作業部会に積極的に参加し、JAIA会員への自動車公正競争規約の周知徹底及び、公正な取引の確保を目指した活動を引き続き進めて参ります。
昨今、自動車産業共有の課題として、整備人材の不足がさらに喫緊の課題となっております。JAIAとしても今般、自動車整備人材関連情報連絡会を設置しました。連絡会においては現在直面している課題について情報収集し、課題解決に向けた取り組みをはじめるとともに、自動車整備人材の課題克服の環境整備を政府等に対してお願いをしたく考えています。
自動車整備士養成施設とメンバー各社との連携を強化する等の取組みなども進めて参ります。JAIAとしてはこれまでも関係団体との連携を行ってきておりますが、先に触れた6月30日の大阪での電動車普及促進イベントにおいても重要テーマとして取り上げ、自動車専門学校、会員各社、販売店の方々やドイツ商工会議所などの関係者にもお集まりいただき、課題に対する解決につながるような意見交換などを行っていただきました。
また、6月、国土交通省により整備人材確保に係る検討WGが立上げられており、JAIAはそのWGに引続き参加し、積極的に活動して参ります。
更に、先ほど安全の所でも触れましたが、アフターセールス分野においても、コネクテッド技術の発展に伴い、様々なサービスが可能となっており、通信回線等を利用したソフトウエア・アップデート時の新たな許可制度、輸入車についても本年10月以降の新型式指定車に対しても導入が決まっている車載式故障診断装置を活用した電子的な車両検査制度、2023年1月より導入される電子式の車検証への制度等に適切に対処してまいります。
自動車リサイクル分野においては2021年7月に自動車リサイクル法の15年目評価が行われ、現在、その提言事項に対する取り組みを開始したところです。関係者会合に出席し、自動車リサイクルの高度化、自動車ユーザーの負担軽減につながる仕組み等を目指して参ります。また、電動化が加速する中で会員各社が適切に車載用蓄電池の回収に対応できるようサポートして参ります。
最後に、主要活動の第5の柱であるモーターサイクルに関する活動についてご紹介いたします。
2022年前半の輸入小型二輪車の新規登録台数は、12,976台で前年同期(11,476台)と比べ13.1%増でした。コロナ禍の「3密を回避した移動手段」として、更に「密にならない遊び方」として趣味性が高く、個性的な商品が揃う輸入二輪車に目を向けて頂いたことが要因と考えます。
さて、二輪活動の大きな柱の一つは「市場活性化のための活動」です。その一つとして今年4月12日・13日に大磯ロングビーチで輸入二輪車試乗会を開催いたしました。コロナ対策を徹底し、大きな事故等もなく盛況に実施することができました。49媒体、のべ152名の報道関係者にご来場を賜りました。
また、4月8日から10日の3日間、愛知県国際展示場にて第1回名古屋モーターサイクルショーが開催され、JAIAは後援名義を付与し、JAIA二輪会員も7社出展しました。高校生以下や女性の入場料を無料するといった積極的な動員施策により、来場者は、目標の3万人に対し、36,188人にも達しました。また、先に触れた6月30日の大阪での電動車普及促進イベントにおいても、電動二輪車を8台出展しました。JAIAは今後も主要都市において同様な企画に積極的に参加し、カーボンニュートラルへの取り組みも進めてまいります。
また、8月25日に3年ぶりにリアルイベントとして大分県日田市にて経済産業省が主導しモーターサイクルの将来について検討を行う第10回BLF(バイクラブフォーラム)にも参加しております。
JAIAは二輪車について高速道路料金の独立化や二輪駐車場の拡充、また二輪免許制度の見直しを要望しています。BLF等を軸として他団体と連携して、政府・各政党のオートバイ関連のプロジェクトチーム、検討会の場等で、高速道路料金区分の独立化と料金適正化に向けた要望活動を実施いたしました。この結果、本年4月よりに道路事業者(NEXCO東日本等)より事前の申し込みにより100㎞を超える走行を37.5%割り引くキャンペーンが実施されております。
さらに、二輪車駐車場拡充に向けた要望活動を実施した結果、本年3月には、警察庁より二輪駐車場の拡充と二輪車駐車違反取締の見直しに係る通達が発出されました。これに関連して、東京都においても小池知事は国際フォーラムに二輪車駐車場を設置することを発表し、7月1日から運用が始まっています。
二輪活動のもう一つの柱である「規制の国際調和を図るための活動」に関しまして、二輪車の排ガス規制は2022年11月より新排ガス規制となりましたが、すでに多くの会員が新基準での認可を取得しており順調に推移しています。
JAIAは今後もさらに輸入モーターサイクル普及と国内二輪市場の活性化に取り組んでまいります。
JAIA会員各社は引き続き、環境・安全性能に優れた魅力ある商品のご提供を続けるとともに、JAIAとしも日本政府や自動車産業及び販売市場に関わる全ての組織と協力して、ユーザー負担を軽減し、また、カーボンニュートラル社会の実現に貢献して参ります。