ルノー・ジャポン株式会社 代表取締役社長 大極 司
ルノー・ジャポンが設立されたのは2000年のこと。しかし、期待したような成果は上げられず、2006年、ルノー事業は日産トレーディングに移管される。そして2009年に大極氏がルノー・ジャポンのCOOに就任。着実に成長を遂げ、2012年にルノー・ジャポン株式会社として独立する。日本市場において“最後発のブランド”と語るルノーのこれからについて話を伺う。
ルノーは何のために日本にきたのか? なぜ日本でルノーを売るのか? を自問し続けています
F 実際にここ数年の販売台数も好調に推移しているようですが、その要因もそうした戦略が功を奏してきたということでしょうか。
大極 そうですね。ルノーは機能や性能よりも、デザインや色や乗り心地といった数値化できない五感に訴えるような、エモーショナルな価値を提供することをうたってきた。
可視化できないだけに難しいことはわかっているのですが、それが数年をかけて少しずつ浸透してきたのかなと思います。
F いま日本にはルノーは何車種が販売されているのでしょうか。
大極 車種数でいえば5車種ですね。ルーテシアにメガーヌ、キャプチャー、コレオス、カングーですね。そしてスポーティなバリエーションとしてルーテシアとメガーヌにルノー・スポールなどがあります。
F 販売台数としては7、8割をカングーが占めると聞いたことがありましたがそれは今もそうなのでしょうか?
大極 これまで我々の戦略にあうクルマがカングーとルノー・スポールしかなかったわけです。それがようやく、ルーテシアやキャプチャーのような新しいクルマが登場して、その比率がかわってきました。現時点で一番売れているのはルーテシアで約4割を占めています。それにカングー、キャプチャーと続いていて、モデルミックスががらりとかわりました。
F ということは、新しいお客さんがルノーにやってきているということでしょうか。失礼ながらフランス車というと、どうしても故障しやすいイメージがあると思うのですが、その点はどうなのでしょうか?
大極 半分くらいが初めての輸入車というお客さまです。ルノーと日産とのアライアンスでもっとも功を奏した部分の1つが品質です。現在、部品レベルではほぼ共通化されていますから、品質的には日産と同等と考えてもらって問題ないと思います。ですから新しいモデルは安心してお求めいただけます。ただ、古いモデルには故障が多いことも事実です。そうしたイメージはすぐに払拭できるものではありませんから、メーカーとわれわれインポーター、そしてディーラーが三身一体となって改善に取り組んでいかなければなりません。
F なるほど。たしかに日産と部品を共通化していると聞けば、一般の人にとっても安心材料にはなります。これからどんなモデルを日本で販売されるのでしょうか。
大極 それはやはりデザインや色使いや、猫足といわれる乗り心地のよさであったり、フランス車らしい個性をもったモデルを導入していきます。フランス人って時々天才があらわれて変なことをやるんです。まさかこんなクルマがってものが出てきますから。
F たしかにありましたよね、ミッドシップのルノー・スポールとかアヴァンタイムとか(笑)。そういうものを日本に入れるんですか?
大極 ええ、そういうものをぜひ日本にも入れていきます。お客様に楽しんでいただきたいし、われわれもお客様と一緒に楽しみたい。
F ちなみにいま日本の輸入車市場におけるルノーのシェアってどれくらいでしょうか?
大極 2014年度の販売台数が4,859台で、シェアは1.7%です。
F ではさらなるシェアの拡大を目指していくと?
大極 いえ、シェアの拡大は目指しません。
F えっ?
大極 ニッチ戦略ですから(笑)、やみくもに数字を追うようなことはやりません。いま全国のディーラー店舗数は64なのですが、もっとネットワークを充実して、お客様の利便性をあげていこうといったことはもちろん考えています。
ずっとマイナーだったフランス車も、品質の向上やあとはインターネットの普及で、たくさんの人に見ていただける機会が増えてきた。輸入車の垣根がどんどん下がっている。輸入車販売って、きちんとやっていけばこれからもっと発展する可能性のある有望産業だと思っているんです。
F 輸入車が有望産業って捉え方がいいですね。たしかにニッチだったカングーもどんどん増えて、いまやジャンボリー(※)ではすごい数が集まるとお聞きしてます。
大極 来場者数は約3,000人、約1,000台のカングーが集まるんです。グッズやパーツなどもお客さんたち自身がオリジナルで開発したり、最近はおもしろそうだと他メーカーのオーナーさんもいらっしゃるようになった。
F 他メーカーのクルマでもOKなんですか? 他社は入場できませんとはやらない?
大極 いえいえ、みんなで楽しもうと(笑)。われわれは楽しいことを提供しようとそれをモットーにやっています。クルマは文化ですから、クルマを通してフランス文化を楽しんでいただきたい。
F クルマを通してフランス文化を楽しむっていい考えですね。
大極 ジャンボリーの様子を本国のルノーに紹介したらみんな驚くわけです。あのカングーでそんなことができるのかと。私はずっと考え続けているのですが、ルノーは何のために日本にきたのか? なぜ日本でルノーを売るのか? その答えのヒントがここにあるような気がするんです。これが日本のお客様がルノーに期待することの1つなんだと。
F ニッチも極めれば大きく実を結ぶと。それってまさにお名前のとおりじゃないですか。これからのルノー・ジャポンにますます期待しています。
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コラムニスト。半導体・電子部品専門のマーケット・アナリストとしての顔をもつ一方で、コラムニストとしても活躍。「日経ビジネスオンライン」、「Tarzan」、「cakes」等に連載をもつ。トライアスロンを趣味とし、圧倒的なバイタリティでプライベートと仕事を両立。仕事の関係上誌面への顔出しはNGでマスクがトレードマークになっている。
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