FCAジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 CEO ポンタス・ヘグストロム
2009年、イタリア・フィアット社が経営再建を目指していたアメリカ・クライスラー社と資本提携を行う。それを機に日本国内でもそれまで別々のインポーターであったフィアット グループ オートモービルズ ジャパンとクライスラー日本が統合され、2012年に新会社、フィアット クライスラー ジャパン(FCJ)を創設。2015年1月1日より社名がFCAジャパンに変更された。国も文化も異なる5ブランドを集約するという大役を担う、ヘグストロム氏に今後の展望について伺う。
ポンタス・ヘグストロム(Pontus Haggstrom)
1965年生まれ。スウェーデン出身。イエテボリ スクール・オブ・エコノミクスを卒業後、1992年サーブ オートモービルズ社へ入社。1996年に日本ゼネラルモーターズ株式会社 サーブ・ブランド セールス&マーケティングダイレクターに就任。2001年、ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社 サーブ&キャデラック・ブランドダイレクター、2005年、欧州ゼネラルモーターズ社(ドイツ)サーブ エクスポートダイレクターなどを歴任し、2008年にフィアット グループ オートモービルズ ジャパン株式会社代表取締役社長に就任。2012年より現職に。
5つのブランド、それぞれのDNAを日本に伝えていきたい
フェルディナント・ヤマグチ(以下F)
ヘグストロムさんは2008年にフィアット グループ オートモービルズ ジャパンの社長になられたということですが、それ以前も自動車業界にいらしたのですか?
ヘグストロム ずっと自動車業界にいます。その長くをGMで過ごしました。スウェーデン出身ですからサーブをはじめキャデラックなども担当していました。
F ということは、やはり子どもの頃からクルマ好きでいらっしゃった?
ヘグストロム 父親がカーガイ、母親はカーガールでしたね(笑)。父はフォードディーラーとしてキャリアをはじめて、最終的にはボルボの副社長までつとめました。
F それはすごい。ということはきっとお父さんは転勤も多かったのでしょうから幼少の頃から世界中を飛び回っていらした?
ヘグストロム そうですね。幼少時代をいろんな国ですごしてきましたし、仕事のキャリアにおいてもオーストラリア、ドイツ、北米、シンガポール、そして日本とわたりあるいてます。実はスウェーデンであまりすごしたことがない(笑)。
F ということはいろんな国の文化のことなどもご存知なんだと思いますが、フィアットとクライスラーという国籍も文化も、バックグラウンドがまったく違う会社が一緒になったことで仕事はだいぶ変化したのではないでしょうか?
ヘグストロム 2012年にFCJを創設するにあたって手がけたのは、まず働く人々の気持ちを統合することでした。ですから別々にあったオフィスをここに集約して、従業員全員が一緒に仕事ができる環境を作りました。社内もフィアットディビジョン、クライスラーディビジョンと分けるほうが簡単なのかもしれませんが、一部のスペシャリストをのぞいては、すべての人が全ブランドに携わるような体制にしています。
F そうなんですか。これまでフィアットだった人はフィアット、ジープだった人はジープを担当するのが普通の流れのような気がしますが、それはなぜですか?
ヘグストロム われわれFCAはいま1つの会社で、5つのブランドをもっているとてもユニークな会社です。フィアット、アルファロメオ、アバルト、クライスラー、ジープの5ブランドを、アルファ/フィアット、クライスラー/ジープ、アバルトという3つの販売チャネルで販売している。複雑な組織だからこそ、みなが会社のことをよく理解しておく必要があると思っています。
F 日本は輸入車にとって特殊な市場だとよく言われます。ヘグストロムさんは5つものブランドを見なければいけないわけですが、どのように日本を捉えられていますか?
ヘグストロム たしかに海外とくらべて日本のマーケットは特殊だと思います。とはいえ輸入車だけで年間約30万台くらいの市場規模があり、これはさらに広がる可能性があると感じています。日本のユーザーは洗練されているし、自動車の歴史やブランドのことを知っている人も多い。そういう日本市場を担当するのはとてもチャレンジングでやる気にさせてくれる仕事です。
F 日本市場はまだまだ挑戦できる可能性があるとお感じになっている?
ヘグストロム もちろんです。欧州や北米、とくにアメリカでは顧客のおよそ50%が法人で1000台をまとめてある会社に納車したり、数千台をレンタカーとして納車といった仕事が多いのですが、日本は違います。お客さんのほとんどが個人で顔が見えるし、みなクルマに対し情熱的で仕事をしていて楽しいのです。
F そうですね、特に輸入車を買うような人たちにとっては、クルマは特別なものかもしれません。
ヘグストロム 地域にもよると思いますが、これだけ交通網が発達した東京でわざわざわれわれのクルマを買ってくださるのは、そのブランドが好きだから、共感できるからといったパッションがあるからだと思うのです。それはうれしいことでもあり、また続けていくのは難しいことでもあります。それぞれのブランドのしっかりとしたバリューとDNAをこれからも打ち出しつづけなければいけません。
F なるほど。ではまずフィアットについてうかがいますが、日本市場における状況はいかがでしょうか?
ヘグストロム 2008年にいまの新しいフィアット500を導入して以来、輸入車でありながら買いやすく親しみやすい、そして運転の楽しい、ブランドとして認知されています。
F ちなみに欧州だとフィアットはどういうイメージなのでしょうか?
ヘグストロム 親しみやすい、大衆車というイメージは同じですがあちらでは、先進的なパワートレインで環境性能に優れているという見方もされています。
F へぇ?、日本だとオシャレとか可愛いとか、そういうデザイン的なイメージが先行している気がします。正直に言えばフィアットに環境とかテクノロジーというイメージはありませんよね。
ヘグストロム 残念ながら日本ではそうです(苦笑)。ヨーロッパのマスコミは自動車の環境性能をCO2排出量の観点から測ることが多いのですが、日本はそうではありません。われわれには環境性能の高いディーゼルエンジンや、日本にも導入していますがツインエアという2気筒のガソリンエンジンがあります。これらは燃費もよくCO2排出量も少なく非常に優れています。
F なるほど。日本ではCO2排出量ってほとんど取り上げられませんね。自動車の宣伝も燃費の数字ばかりをうたっている。
ヘグストロム 実はフィアットのラインナップのCO2排出量を平均して見た場合、業界でトップレベルで環境負荷は低いと言えます。しかし、特に日本の場合は最終的な結果としてCO2排出量がいくらなのかということよりも、テクノロジーとしてハイブリッドがあるのかないのか、そこが重要視される傾向にあります。
ツインエアを搭載するフィアット500の燃費は日本のJC08モードでも24km/リッター、CO2排出量はわずかに97g/Kmです。これはハイブリッドカーにも劣らないものです。ですからわれわれもデザインの面だけではなく、こうした環境性能の高さも前面に出していかなければいけないと思っています。
F フィアット500は街でも良く見かけますが、やはりこのクルマの導入でだいぶ販売台数はかわりましたか?
ヘグストロム それはもう、3倍にも4倍にもなりました。フィアット500は200万円を切る価格帯から設定できていますから、リーマンショック時も、2011年の震災時にもきちんと支持されてきました。こうした積み重ねでわれわれのブランドも2014年は通年で過去最高の台数を記録しています。
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