インタビュートップ > Vol.6 フォード・ジャパン・リミテッド 代表取締役社長 兼 CEO 森田 俊生

フォード・ジャパン・リミテッド 代表取締役社長 兼 CEO 森田 俊生

日本におけるフォードの歴史は戦前にまで遡る。米国フォードは1924年に日本フォードを設立、翌年から組立生産を開始し日本のモータリゼーションの発展に寄与する。1980年代はマツダとの提携によりオートラマを設立、1997年にフォードセールスジャパンへと社名変更。その後1999年、フォード・ジャパン・リミテッドが設立される。2011年、社長に就任した森田氏にこれからの日本でのフォード・ビジネスについて話を伺う。

新しいマスタングで、新生フォードの魅力を伝えていきたい。

加藤 フォードといえば、もう少し年齢層が上の方には、マスタングというブランドアイコンがあります。初代マスタングが登場する映画『男と女』であったり、スティーブ・マックイーンの『ブリット』であったり、憧れた人も多いと思うんです。

今後、さらにフォードの認知度を高めていく上で、このアメリカンなマスタングをどのように打ち出していくのか、そのあたりはどうお考えでしょうか?

森田 ちょうど今年の4月に新型をローンチしたばかりです。実はマスタングはJAIAさんより1年先輩で、昨年ちょうど50周年を迎えています。まずは「50 YEARS EDITION」という特別仕様車を350台の限定で導入しています。

加藤 それはどういった仕様なのですか。やはりエンジンはV6やV8ですか?

森田 いや、エコブーストと呼ばれる2.3リッター直4です(笑)。50周年記念エンブレムなどが装備されていて、この限定車は左ハンドルのみですが、今年の後半には右ハンドルモデルや5.0リッターV8エンジン搭載モデルも導入を予定しています。

加藤 マスタングもついに、直4で右ハンドルが主流になると。我々世代にとっては正直、少し複雑な気もしますが(笑)、しかしきっと日本市場でも支持されるでしょうね。その限定車に対するお客さまの反応はどうですか?

森田 スタートダッシュが非常によくて、いい意味でちょっと見誤ったかなと。すでに足りない状態でこれから本国と相談して、追加を検討していこうと思っています。

※ 2015年4月に発売したマスタングの特別仕様車「50 YEARS EDITION」は350台が約1ヶ月で完売したため、6月4日、フォード・ジャパン・リミテッドは200台を追加販売すると発表した。
加藤 私の個人的な感覚ですが、マスタングを欲しい人って何かと比較して選んでいないような気がするんです。それはどうなんですか?

森田 本国からもよく何がコンペティターだと聞かれるんです。これまではカマロだと答えていましたが、この新型はもっと広い層に支持されるポテンシャルがあるとおもっています。

日本でも私がちょうどフォードに入社した1994年に4代目のマスタングの導入がはじまってヒット作になりました。たしかにこの2ドアクーペのマーケットは縮小傾向にありますが、潜在的にまだまだマスタングに乗りたい方はいらっしゃる気がしています。

加藤 たしかに4代目は価格戦略もうまくて売れましたよね。一方で先代などは日本に正規輸入されるまでに随分と時間がかかって、そのあいだに並行輸入車がたくさん入ってきて、我々としてももったいないなという思いで見ていました。

森田 いまフォードは地域制をとっていて、日本はアジア・パシフィックに属していますが、以前よりもアジアに対する意識が高まっているので、レスポンスは非常によくなっています。

これまでのマスタングは、基本的にアメリカ市場だけで販売していました。クーペ市場は減少傾向にあるとはいえ、アメリカでは年間約8万台も売っているわけです。輸出されるのはほんの一部ですから、どうしても日本への対応は遅れがちでした。

しかし、この新型は先程の“One Ford Plan”のもとで、世界120カ国以上市場で販売されるようになります。そのなかには25の国と地域に右ハンドルマーケットが存在するため、開発段階から右ハンドル仕様の設定があるというわけです。

加藤 なるほど。従来のマスタングファンにアピールするだけでなく、それで新しいファンを作ることができるというわけですね。

森田 これまではなかなか本国に日本の状況をうまく伝えきれていませんでした。しかし、この3年でフォーカスに続きフィエスタを入れたあと、北米とのタイムラグも少なくマスタングも導入することができました。いま少しずつフォードは変わってきています。

加藤 それは楽しみです。フォード車はもっと売れる可能性があると感じていますから。ただ都心ではあまりディーラーを見かけない気がしますが、全国に販売店の数はいくつあるのでしょうか?

森田 6月に1つ増えて、55店舗になります。ただ、おっしゃる通り東名阪をはじめ都市に少ない。東京でも中央区、港区、渋谷区といった都心にはありません。

加藤 うちの編集部がある目黒区には?

森田 すみません、ありません(笑)。われわれのネットワークは他社に比べると少ないのですが、商品構成が苦しいときにも我慢して長くフォードとおつきあいくださっている店がたくさんあります。ですからまずはきっちりと売れる商品を用意して、既存の販売店を盛り上げていかなければいけない。

加藤 マスタングも出ましたし、今年は飛躍の年ですね。

森田 実はまだ詳しくは申し上げられませんが、今年はマスタングに続いてもう1台ニューモデルがあります。過去5年連続で販売台数を伸ばすことができているのですが、今年は6年連続を目指して、日本でのプレゼンスを高めていきたいと思っています。

加藤 それは楽しみですねえ。達成のあかつきには、ぜひ目黒にも出店してください(笑)。

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インタビュアー:カーグラフィック代表取締役社長 加藤 哲也
1959年生まれ。東京都出身。大学卒業後はテレビ番組制作会社に勤務。1985年、出版社である二玄社へ転職。自動車専門誌『カーグラフィック』に配属される。2000年に編集長に就任。2007年には姉妹誌であった『NAVI』の編集長も歴任した。2010年に二玄社からカーグラフィックの発行を引き継ぎ同社を設立、代表取締役社長を務める。

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