インタビュートップ > Vol.8 マセラティ ジャパン株式会社 CEO 牧野 一夫

マセラティ ジャパン株式会社 CEO 牧野 一夫

マセラティジャパンは2010年4月にイタリア、マセラティ本社の子会社として設立。翌年、それまで正規輸入元であったコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドから、インポーター権が移管され、マセラティの日本法人として事業活動をスタートする。そして2014年、マセラティは創業100周年を迎え、新型モデルを導入するなど飛躍の年となった。さらなる攻勢をかけるべく日本人としてCEOに抜擢された牧野一夫氏に今後の事業展開について話を伺う。

新型SUV「レヴァンテ」で新たな顧客層を開拓していく

加藤 いまラインナップは、ギブリ、クアトロポルテ、グラントゥーリズモ、グランカブリオの4モデルだと思いますが、稼ぎ頭でいうとどれになるのですか?

牧野 ギブリです。マセラティの強みは、スポーツカーの要素がありながら4ドアをメインにしていることだと思っています。ギブリの戦略的な価格を知っていただくと、マセラティってこれくらいで買えるんだとみなさん驚かれます。

加藤 ということは、ギブリによって新しい顧客層がやってきたということでしょうか?

牧野 そうですね、メルセデスやBMWといったドイツ車から乗り換えていただいたお客さまが多いですね。われわれとしては、やっぱりドイツ車が良かったと言われないようにしなければならない。

加藤 やはりマセラティの良さって、エレガントで、いい具合に控えめで、それでいてスポーツカーの要素があることだと思うんです。ギブリやクアトロポルテにはとてもフォーマルな印象があって、それが受け入れられているのではないでしょうか。いま、モデルミックスとしてはどれくらいですか?

牧野 ギブリが6割強でクアトロポルテで25%くらい、残りが2ドアモデルといったところです。

加藤 たしか本国では、レヴァンテに続いて、新しいクーペのアルフィエーリの市販モデルを2016年くらいに発表して、2018年にはグローバルでの販売台数はいまの3倍以上になる7万5000台を目標に掲げているようですが、とても野心的ですよね。この変革期に身を投じるおもしろさはありますか?

牧野 ありますよね、根っからのマゾだと思いますけど(笑)。

加藤 そうすると、もちろん日本も無関係ではいられないわけで、販売台数に関して本国からもすごいプレッシャーがくるかもしれない。

牧野 確かにそうかもしれません。ただ、例えば値引き合戦のようなことは絶対にやりません。日本人はブランドに対して知識や経験がありますし、われれれのお客様もその価値をわかってくださる。ブランドを守ることって大変なんです。壊すのは簡単なんですけどね。

加藤 ポルシェにいた時代に、ブランドが壊れると思ったことはないですか?

牧野 正直いえばカイエンを導入するときは不安でした。ところが蓋を開けてみると、昔からのお客さまも受け入れてくださって、結果的にはブランドの幅が広がった。マセラティにとってレヴァンテがそのような存在になると確信しています。

加藤 マセラティの昨年の国内登録台数が約1,400台ということですが、数年後にはどれくらいをイメージされていますか?

牧野 いま全国にディーラーが23店舗あります。1つの目安としては将来的には1販売店あたり年間100台くらいを目標として置いています。ただし、一気に増えるとサービス体制もとれませんから、少しずつが理想的だと考えています。

加藤 ギブリによって顧客の年齢層は少し若くなりましたか?

牧野 そうですね、だいたい40代後半くらいから50代で、少し若くなっています。自動車メーカーはどこもそうだと思いますが、若い顧客の獲得は課題としてあります。そのなかでもレヴァンテは、より若い世代の方にも興味をもってもらえるクルマだと思います。

加藤 最近うちのアンケートにも小学生とか10代の子どもたちが絵を書いて送ってきてくれたりするケースが増えてきました。それはおそらくバブル世代を過ごした、ブランドとの親和性の高くて消費欲のあるお父さん、お母さんの子どもたちが、クルマというものに興味を持ってくれているんじゃないかと思うんです。

若者のクルマ離れと言われるように、いまの20代、30代の人たちの層は、ぽっかり開いているように感じていますけど、ここから先伸びてくる可能性もある。

牧野 そういえば、うちでもWEBサイトから試乗申し込みに、15歳の男の子が申し込んでくれたらしいんです。もちろん親御さんと一緒にいらしてくださいとお断りしたんですが、マセラティを知っているのはそういう世代の影響があるのかもしれませんね。

加藤 まさにこれからの自動車業界を支える“金の卵”ですね。すぐにカタログを郵送してあげて、リテンションしたほうがいいかもしれません(笑)。

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インタビュアー:カーグラフィック代表取締役社長 加藤 哲也
1959年生まれ。東京都出身。大学卒業後はテレビ番組制作会社に勤務。1985年、出版社である二玄社へ転職。自動車専門誌『カーグラフィック』に配属される。2000年に編集長に就任。2007年には姉妹誌であった『NAVI』の編集長も歴任した。2010年に二玄社からカーグラフィックの発行を引き継ぎ同社を設立、代表取締役社長を務める。

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